おわかれ

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今日はちょっぴり寂しい気持ちを、ただひたすらに綴ります。

 

あれは、2017年の夏の日の夜。アパートの玄関先が、出会いの場所でした。

仕事の疲れとうだるような暑さのため、重い体を引きずりながら帰宅。確か、片手にはコンビニで買ったお弁当だったかカップ麺だったか。慣れた手つきでカバンから鍵を取り出し、ドアノブに手をかけようとした時、足元から「小さな」視線が。目を落とすと5㎝ほどの黒い影。一瞬、「G」に出会ってしまったかと体を硬直させましたが、その独特なシルエットと幼き日の自分の記憶からそれが「クワガタ」だと認識。きっと風に飛ばされて、僕の住む2階の高さまで来たのだろう。そのまま放っておけば自力でどこかにいなくなったか、定期的に僕の愛車に爆弾を落としていく鳥たちのエサになっていたか。もしそうなっていれば、3年後の今日、この気持ちで文章を書くことはなかったでしょう。

 

初めは小さいガラス瓶にプランター用に買った土を敷いただけのところに住んでもらっていましたが、だんだん子供の頃の気持ちがよみがえってきて熱が入り。虫かごに始まり、専用の土や隠れるための木、エサとなるゼリーを買い足し。だんだんと飼い主よりも立派な部屋になっていきました。そもそも、コイツが何クワガタかを知るためにTwitterで聞いてみたところ「大き目なコクワガタ」ということもわかりまして。教えてくれたみなさん、その節はお世話になりました。

そうこうしているうちに、冬。だんだん夏ごろの活発な動きがなくなり、さすがに冬は越えられないだろうと思っていましたが、春になって部屋が暖かくなってきたころに見てみると…。

動いてるぅーーー。冬はゼンマイが切れたおもちゃくらい「虫の息」だったのにーーー。早くエサをよこせと言わんばかりに指を挟んでくるーーー。

 

そんなやり取りを3年。今年もだんだん夏らしくなってきたなぁ、なんて思っていたら。どうやらお迎えが来てしまったようです。調べてみると、コクワガタの寿命は2~3年とのこと。そもそも、うちの玄関の前にいたときに何歳だったかもわからないし、その数字を見ると長生きしてくれた方なのではないかと。昆虫だから「なつく」こともなかったけれど、やっぱりちょっとしんみり。今夜は一杯、思い出にグラスを傾けようと思います。

2020年5月13日 13:44

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