エピソードⅠ~洗礼~

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「髭脱毛」をしようと思い立ち、行先として思いついたのが皮膚科。

医療脱毛と呼ばれる「効果が高い」とされるものが受けられるという。

自分なりに調べた結果、費用面や期間などを踏まえて、「濃いめ」の自分にはそれが最も賢い選択だろうと思い、皮膚科に通うことを決意。

 

以前、ててて!TVでお世話になった皮膚科医の原先生に早速相談。

「一度見てみて、どういうプランで進めるか考えていきましょう」とのこと。

そうであれば、思い立ったが吉日。クリニックに駆け込んだ。

 

「んー、結構濃いね!」

 

わかってはいたが、やはり僕は「濃い」人間なのだ。

客観的にも確証が得られ、より決意が固まる。

 

僕「どうせなら、ツルツルにしてください!」

先生「結構痛いかもしれないけど、その覚悟があるなら大丈夫よね!

一応、麻酔もあるけどしておく?」

僕「…ハイ!(え、麻酔しないと耐えられないくらい痛いってこと…?いや、でもここまで来たら徹底的にやってもらおう…!)」

 

そこから髭のある部分に、クリームタイプの麻酔をぬりぬり。

ラップでぐるぐる巻きにして、1時間待機。

家のお風呂で白髪染めをしていた父親の頭を思い出す。

 

だんだん、顔周りが痺れてきたところで、レーザー脱毛開始。

 

レーザーの光が目に入らないよう、目隠し装着。

視界を奪われたところで、急に緊張感が増す。

このあたりから、施術してくれるスタッフの方との会話のペースが上がる。

正直、中身のない話を一方的に話しかけているだけなので、何を話したかはもう覚えていない。そう、僕は「怯えて」いたのだ。

 

ス「顔を左右半分に分けて、各6回ずつレーザーを当てていきます。途中、氷で冷やしながら当てていきますね。痛かったら言ってください」

僕「…ふぁい(麻酔で顔が動かしにくい)」

 

 

ス「では…いきます。」

 

自分の心臓の音が急激に大きく聞こえだす。

繰り返しになるが、僕は「怯えて」いるのである。

 

首とあごの境目あたりに手を添えられ、『ピピピピ…』

 

…。

…あれ?今当てた?正直、拍子抜けするくらい「無感」だった。

もしかして、僕は体質的に髭脱毛に対する耐痛性が高いのか?

淡い期待が胸に浮かぶ。

 

僕「ふぁれ?もうあへまひは?(あれ?もう当てました?)」

ス「比較的髭が薄いところはそんな感じみたいです。じゃあ段階的に「濃い」部分に当てますね。ではいきます…」

エラのあたりから、あごの先端くらいに手を当てられ、『ピピピピ…』

 

僕「ぬぉお…!!い、いへぇ…!(痛え…!)」

…でも耐えられないほどではない。

強めの静電気が、『ピピピピ』のリズムで走るような感覚である。

 

ス「大丈夫ですか?」

僕「大丈夫れす…!まだ耐えられまふ…!」

ス「では、皆さんが最も痛がる「鼻の下」に行きますね。」

 

その言葉を聞き、体中の毛穴という毛穴が開くのがわかる。

ベットで寝そべり、身動きが取れない中で訪れる未知の痛みという恐怖。

そう、お気づきだと思うが、僕は「チキンハート」なのだ。

 

鼻の下と唇を軽く引っ張られ、文字通り鼻の下が伸びた状態になり、『ピピピピ…』

僕「もももももももももも…!!!!!」

 

事実、僕は「も」以外の音を発することができなかった。

鼻の下が伸びているからである。

文字にするとだいぶ間抜けだが、心からの叫びである。

先ほどまでの静電気とは似ても似つかない、何か鋭利なもので突かれまくるような刺激的な痛みが僕の鼻の下を一気に駆け巡る。

 

ス「痛いですよねー。でもこれで1回目が終わりました!あと『5回』頑張りましょう!」

僕「ご、5ふぁい…。がんばりまふ…(泣)」

 

そこから先は、まさに「まな板の鯉」だった。

ひたすら痛みに耐えるだけだった。

優しいスタッフさんのおかげで、心が折れずに済んだ。感謝しかない。

もし、かっこつけて(何がかっこいいかわからないが)麻酔をしなかったらと思うと、今でもぞっとする。

 

時間にして、約30分。

僕にとって初めてのその30分は、一生忘れることはないだろう。

 

ス「では、次は1か月半~2か月後に。まずは『6回』を目指しましょう!」

 

 

…僕の戦いは、まだ始まったばかりである。

 

(続)

2022年1月4日 16:08

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