第16回「田中銀行」(7月19日放送)
甲州市、旧甲州街道・勝沼宿。
「田中銀行」は、明治30年頃に、
「勝沼郵便電信局舎」として建てられました。
当時の局長・田中英作が、
旧睦沢学校(現在の藤村記念館)などを手掛けた、
下山大工の松木輝殷に依頼したものです。
ノミで細かく、矢羽根の装飾が施された車寄せの柱。
開きドアに、菱格子の天井。
石積みを模した外壁に、
上げ下げ窓やバルコニー。
ところどころに洋風の意匠を見ることができます。
大正9年、田中家は「山梨田中銀行」を設立。
重要書類を保管するためのレンガ造の土蔵や、
繭蔵・米蔵が、背後に設置されました。
博物館として公開されている建物の一階には、
銀行時代の貴重な品々が。
頭取室には、
田中薫策頭取が愛用していたシルクハットや、
机、タイプライターが残されています。
フェンスにも「田中」の文字が優雅にあしらわれ、
近代化を迎えた宿場町での、
田中家の洋風デザインへの強いこだわりが感じられます。
在りし日の地方銀行の姿を今に伝えると共に、
モダンな時代の香りを漂わせる建物です。
2016年7月19日 23:00