第31回「長潭橋」(11月1日放送)
国内屈指の渓谷美を誇る、御岳昇仙峡。
その玄関口に、「長潭橋(ながとろばし)」があります。
荒川の上流、甲府市平瀬町と甲斐市吉沢の、
境に架かっている橋です。
明治36年、中央線が甲府まで開通。
観光地として、
にわかに脚光を浴びた昇仙峡への、
甲府市内からの道路が整備される中、
橋が誕生したのです。
大正14年に竣工した、
県内最古のコンクリートアーチ橋。
長さは34.6メートル、幅3.6メートル。
ケーブルクレーンによるステージング工法で作られ、
総工費は26,000円、現在の約2億円。
竣工以来、数多くの絵葉書や観光案内に掲載され、
昇仙峡のランドマーク的役割を果たしてきました。
アーチの向こうに見えるのは、上流の長潭渓谷。
橋の名前の由来です。
特に珍しい構造ではありませんが、
ほぼ建設当時の状態で残っているため、
優美かつ懐かしい雰囲気を醸し出しています。
2012年には、公益社団法人土木学会により、
歴史的・文化的価値のある近代の土木構造物に与えられる、
選奨土木遺産に認定されました。
老朽化から、手前に新しい橋の建設が決まっています。
その後は、歩行者専用の遊歩道となる予定です。
90年以上、観光客を出迎えてきた景勝地のシンボルは、
貴重な土木遺産として、さらなる存在感を示しています。
2016年11月1日 22:00