第33回「藤村記念館」(11月15日放送)
甲府駅、北口広場で優美な姿を見せる「藤村記念館」。
明治8年に、旧睦沢村(・現在の甲斐市亀沢)に建てられた、
「睦沢学校」の校舎です。
当時の県令・藤村紫朗が奨励した、
西洋建築に似せた擬洋風建築、
「藤村式」と呼ばれます。
費用を抑えるため、村人総出で建設しましたが、
設計だけは、下山大工の棟梁・松木輝殷に依頼しました。
外観には、様々な洋風の意匠が。
中央玄関の車寄せ。
吹き放ちには、柱頭と礎盤のある円柱。
2階には、手すりのあるベランダに、
菱組みの透かし打ち天井。
出入口や窓は、黒塗りアーチ形の枠で飾られ、
窓は、両開きのガラス戸と鎧戸の二重扉となっています。
一見、洋風ながら、外壁は、土蔵と同じ漆喰塗り。
隅の部分は、黒の漆喰で、
石を積み上げているように見せています。
雲の形の飾り板も、日本や中国で見られるもの。
屋根は宝形造りの桟瓦葺で、
中央に「太鼓楼」と呼ぶ塔屋をのせています。
取り壊し寸前のところで、昭和41年、
武田氏館跡(武田神社)に移築され、
藤村紫朗にちなんだ「藤村記念館」として、
民俗・歴史・教育資料を展示する資料館となりました。
漆喰塗りの、アーチ型の階段を上った
2階には、学校で使われていた木の教壇や机が並べられています。
平成22年、甲府駅周辺の整備に伴い、
市民・観光客の交流ガイダンス拠点として生まれ変わりました。
かつて、百棟以上建てられた「藤村式建築」。
そのほとんどが失われた現在、
山梨に、西洋の風をもたらした業績と記憶を、
後世に伝える貴重な建物です。
2016年11月15日 23:00