第52回「旧角田医院」
富士吉田市、西裏通りの突き当りに、
ひときわ目を引く建物が。
「旧角田医院」は、昭和3年、
高級料亭として作られました。
神社仏閣を思わせる外観。
棟梁は、宮内庁出入りの職人・泉太郎です。
玄関の上、唐破風には、
曲線状の「茨垂木(いばらたるき)」。
軒裏には立派な「扇垂木(おうぎたるき)」。
いずれも神社仏閣以外では珍しいもの。
いたるところに彫刻も施され、
職人の確かな腕が見られます。
昭和初期、機械化が進んだ織物産業の隆盛で、
富士吉田の繁華街は、
深夜まで人が絶えないほどの賑わいを見せました。
問屋や業者をもてなした、高級料亭。
塵返し(ちりがえし)と呼ばれる障子の桟は、
角度がつけられ、ほこりがつきにくいようにしています。
戦後は、医院になりましたが、
2階部分は、料亭当時のままの姿を残しています。
漆塗りの格天井、
欄間には「忠臣蔵」の大石内蔵助が料亭で遊ぶ彫刻も。
外観のみならず、内装も、細部まで装飾され、
高級感を漂わせています。
ベランダの板が1枚だけ、
表裏間違えて貼られ、ささくれています。
織物で栄えた富士吉田。
日夜、宴会が開かれた絢爛たる料亭が、
その歴史を今に伝えています。
2017年3月30日 15:46