2025年6月27日放送
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農作業の事故を防ごう
荒木 近年、農作業中の事故が多く発生しています。県でも農繁期を迎えた6月を「農作業安全推進月間」として、農業者の安全意識の向上のための啓発活動に取り組んでいます。きょうは農作業中の事故を防ぐための対策などを詳しくご紹介します。山梨県 農業技術課 瀧澤里緒 さんとお伝えします。
荒木 瀧澤さん、6月は「農作業安全推進月間」なんですね!
瀧澤 山梨県では、気温が上昇し、農繁期を迎えた6月を「農作業安全推進月間」としています。労働局、市町村会、各種農業団体、農業機械商業協同組合などの関係機関と連携して、農作業安全推進会議を設置し、「農作業は焦らず、急がず、慎重に」をキャッチフレーズに、各種啓発活動を行っています。
荒木 農作業での事故の発生状況はいかがでしょうか?
瀧澤 はい。近年、農作業中の事故によって、毎年、多くの尊い命が失われています。令和5年に全国で発生した農作業事故死亡者数は236人でした。農作業事故の死亡者数自体は、年々減少傾向にありますが、それは生産者数が減少しているからで、ふだん主に自営農業に従事している、基幹的農業従事者10万人あたりの死亡者数は増加傾向にあります。
荒木 山梨県内ではいかがでしょうか?
瀧澤 昨年は(R6)は5人、一昨年は熱中症2人を含む6人が亡くなっています。
荒木 事故はどんな原因で起こっているんでしょうか?
瀧澤 山梨県で昨年発生した死亡事故5件、すべてが農業機械によるものでした。過去10年の死亡事故のデータでは、乗用型トラクターによるものが31%、昇降機が22%、スピードスプレーヤー(SS)が16%となっています。
荒木 死亡事故はどのような年齢の割合でしょうか?
瀧澤 県内での昨年の死亡事故は全員が65歳以上でした。過去5年をみてみても、65歳以上の方の割合が95%となっています。
荒木 農作業事故を防止するにはどんな対策が有効でしょうか?
瀧澤 農作業を行う前に、家族と一緒に安全項目を確認することが効果的です。
荒木 家族と安全項目の確認ですね!どんな項目でしょうか?
瀧澤 例えば、「家族の体力や体調に応じた作業分担をする」「畑や農道の危険個所の情報を共有する」「作業場所や作業内容をお互いに伝えあう」など、家族で安全な農作業について日頃から話し合うことが大切です。作業が立て込んで、どうしても無理しないといけないときは、その危険に対する対策を練り直して、万全な計画で作業を行ってください。そして、単独ではなく、複数人で作業をして、なるべく早く、事故や体調不良に気がついて対処できるようにしてください。
荒木 農業用機械ではどのようなチェックが必要ですか?
瀧澤 そうですね。日頃からブレーキや安全装置の点検してください。また、燃料給油時や点検、補修時には必ずエンジンを停止してください。作業に適した服装と、ヘルメットや防護メガネ等を必要に応じて装着して、機械を始動・運転する際は周囲の安全を確認してください。
荒木 点検と安全な服装・装備、周囲確認ですね!
瀧澤 はい!また、農作業でありがちなのは、年に数回しか使わない、その稼働日に機械の動作不良がおきることがあります。ほ場で不具合がおきると、その場でエンジンを回しながら不具合を確認してしまいがちで、まきこまれ事故がおきやすくなります。不具合が直ったとしても、忙しい時期は、修理時間のロスを取り戻そうとして、機械の動作スピードを速めることがあります。これまでやったことがないスピードで機械を扱うことになり、操作ミスを誘発する危険が高まります。
荒木 機械の不具合がその後の事故につながってしまうことがあるんですね…。
瀧澤 そうなんです。さらに、年に数回しか使わないからこそ、操作方法、使い方があいまいで、操作ミスがおき、さらに慌てて、間違った操作を重ねてしまうこともあります。当日に不具合や操作ミスがおきないように、事前の点検、整備が重要です。
荒木 そのほか注意したいことはありますか?
瀧澤 危険個所を把握して事故防止対策を行うことです。畑への移動で通行する農道などの危険な場所を把握し、畑の凸凹、畦(あぜ)の崩落などを常に確認してすぐに補修してください。畑の境界、接触しそうな枝や支柱に目印をつけるのも有効です。
作業に没頭すると周りの物が見えなくなって、長時間の作業で注意力も落ちます。さらに疲労によりつまずきやすく、転倒しやすくなります。また、山梨県は傾斜地が多く、さらに雨など足場がぬれると滑りやすくなり、より危険性が高まります。作業する時には、足元も含め周囲の確認を徹底していただきたいと思います。
荒木 確かに傾斜地はより注意が必要ですね!そして、体調管理も大切ですよね!?
瀧澤 はい。十分に睡眠や休息をとって疲れを残さないようにして、ゆとりある作業を心がけ、無理な作業にならないようにしてください。そして緊急時に備えて携帯電話をお持ちください。
荒木 そして、これからの季節は特に熱中症にも注意が必要になりますね。
瀧澤 そうですね。年々、気温が上昇傾向にあって、農作業中に熱中症になる人が増えています。R5は全国で37名が、農作業中の熱中症により死亡しています。今年の6月から、農業でもアルバイトむ雇用者に対して、職場における熱中症の重篤化を防止するための「体制整備」「手順作成」などが義務化されました。一昨年、昨年と秋が夏のように高温傾向で推移しておりますので、きちんと対策を取っていただきたいです。
荒木 熱中症予防にはどんなことに気を付けたらよいでしょうか?
瀧澤 はい。まず、高温時の作業は極力避けてください。また、喉の渇きを感じる前に、こまめに水分・塩分を補給してください。さらに、複数名で作業を行うようにして、離れた場所で作業をする際は、時間を決めて連絡を取り合うようにしてください。
熱中症対策アイテムの活用をしてください。帽子や吸湿速乾性の衣類の着用、ファン付きの作業服や送風機なども積極的に活用してください。
荒木 もしも、熱中症が疑われる場合はどうすればよいでしょうか?
瀧澤 はい。熱中症の代表的な症状は、汗をかかない、体が熱い、めまい、吐き気、頭痛、倦怠感、判断力低下などがあり、これらの症状がみられたときは、直ちに作業を中断してください。意識の確認をして、意識がない、呼びかけに反応がない、ボーっとしているなど、意識の異常がある場合は、直ちに救急要請してください。併せて、涼しい環境へ避難し、衣服を緩めて体を冷やします。そして水分・塩分を補給してください。応急処置をしても症状が改善しない場合は医療機関を受診してください。
荒木 はい。まずは体調を整えて健康に農作業をしていただきたいですね。
瀧澤 そうですね!農作業は「焦らず、急がず、慎重に」を心がけて、安全第一で行っていただきたいと思います。
荒木 はい、わかりました。きょうは山梨県 農業技術課 瀧澤里緒さんとお伝えしました。ありがとうございました。
瀧澤 ありがとうございました。