2025年8月22日放送
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富士山噴火への備え
荒木 8月26日は「火山防災の日」です。明治44年のこの日、浅間山で日本初の火山観測が始まりました。去年から、この日が活火山への対策についての関心と理解を深めるために火山防災の日として制定されました。ここ山梨では富士山の噴火が想定されます。
荒木 きょうは「富士山噴火への備え」について山梨県 防災局 火山防災対策室 古屋 海砂さんとお伝えします。古屋さん、よろしくお願いします。
古屋 よろしくお願いします。
荒木 富士山は活火山と言われますが、現在どのような状態なんでしょうか?
古屋 はい、富士山が最後に噴火したのは、今から300年以上前、江戸時代の1707年です。しかし、富士山は直近5600年の間で約180回、不規則に噴火したことがわかっています。これは平均すると30年に1回噴火していることになります。300年以上噴火していないことから、今後、いつ噴火してもおかしくない状況といえます。
荒木 平均すると30年に1回…。それはしっかり備えておきたいですね。まず富士山を知ることだと思いますが、富士山噴火はどんな特徴がありますか?
古屋 はい。富士山は「噴火のデパート」と形容されるほど多様な噴火現象を起こすことで知られています。
荒木 噴火のデパートですか!?
古屋 そうなんです。富士山が噴火すると「溶岩流」、「火砕流」「降灰後の土石流」「大きな噴石」「火山灰」など様々な噴火現象が発生する可能性があります。
荒木 これまでどの程度の規模の噴火があったんでしょうか?
古屋 はい。富士山は小規模な噴火がほとんどですが、西暦800年代の貞観噴火では、大規模な噴火により大量の溶岩が流出し、せのうみという一つの湖が分断されて西湖と精進湖ができたという記録も残されています。また、記録が残されている中で最大級とされる宝永噴火では、爆発的な噴火が16日間続き、東京でも2㎝の降灰があったとされています。
荒木 想像もつかない規模です。
古屋 そうですね。また富士山は、山頂から麓までの広い範囲に火口ができると想定されています。さらに、予兆が現れるのが数時間前となる可能性があり、前兆現象が現れても、噴火する場合もあれば噴火しない場合もあって、確実な予測が困難なんです。
荒木 富士山はいつ噴火してもおかしくない、しかもどこから噴火するか分からない…私たちができるのはしっかり知識を持って、備えることですね。
古屋 はい。令和3年3月に「富士山ハザードマップ」が改定されたことに伴い、令和5年3月に富士山火山避難基本計画が改定されました。基本計画は、富士山の火山災害警戒地域に指定された3 県=神奈川、静岡、山梨の27市町村における避難対策のための基本的なルールを定めたもので、「いのちを守る」避難を最優先に、「くらしを守る」避難についても最大限考慮した計画となっています。
また、ハザードマップの改定により、被害想定区域が拡大し、避難対象人口が増加したことから、避難基本計画では、避難する範囲、避難する時期、避難方法が見直されています。
荒木 避難対象となる地域はどんな準備が必要でしょうか?
古屋 先ほど申し上げた通り、富士山の噴火では様々な噴火現象が発生します。それぞれの噴火現象は「到達範囲」、「現象そのものの速度」、「到達する時期」が異なります。そのため、自分が住んでいる、または通勤・通学しているエリアでは、どのような噴火現象による被害がどのくらいで到達するのかを、ハザードマップで日頃から確認しておくことが重要です。
荒木 まずは、自分が生活しているエリアではどんな噴火現象が、どのくらいの時間で到達するのかの確認ですね。噴火の予兆が現れたら、避難の呼びかけがされるんでしょうか?
古屋 火山活動が活発化した時は、気象庁から5段階に分かれる噴火警戒レベルが発表されます。噴火警戒レベルに応じて、避難が必要なエリアが決められていますので、市町村の防災マップ等で確認してください。また、噴火警報が出たからといって必ず噴火するわけではないこと、噴火警戒レベルは順番に出されるわけではないことに注意をしてください。
荒木 では、避難の方法について教えてください。
古屋 改定された富士山火山避難基本計画では、足の不自由な方や小さなお子様を連れた方(要支援者)以外は、溶岩流からは原則、徒歩避難を推奨しています。溶岩流が市街地を流れるスピードは人が歩く速度と同じかそれよりも遅いこと、溶岩流の流れる範囲は限定的であることから徒歩避難でも十分であると予想されます。また、車両による避難は、渋滞による逃げ遅れや緊急車両の妨げといった問題点があるので、徒歩避難を推奨しています。
荒木 車の避難ではなく、徒歩での避難ですね。
古屋 そうですね。さらに、徒歩で避難する際は、溶岩流が流れる方向から離れる方向に、高台に避難することがポイントです。この徒歩での避難方法は、山梨県の公式YouTubeチャンネル「山梨チャンネル」でも詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
荒木 はい、ぜひ参考にしてください!そのほか避難する際のポイントはありますか?
古屋 はい。富士山に噴火の予兆があると発表された際、自宅以外の親類宅などで生活ができる方は、行政からの避難指示前であれば自家用車で早めに避難していただく、自主的な分散避難も呼び掛けています。
荒木 そして、避難となりますと非常持ち出し品、備蓄も大切になりますね。
古屋 そうですね。食料や飲料水、常備薬を1週間程度備蓄するほか、雨具や防寒具、ラジオ、モバイルバッテリーなどご自身やご家族で必要なものを確認して準備してください。さらに火山灰に備えて、ヘルメットやゴーグル、マスクも用意してください。
荒木 ぜひ、この機会に備蓄の用意、再確認をお願いします。また、新しいガイドラインを策定していると伺いました。
古屋 はい。令和7年3月、内閣府が「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」を公表しました。このガイドラインを踏まえ、今年度から神奈川県、静岡県と連携して、本県独自の指針の策定に取り組んでいます。実際の降灰時の状況を想定して、他の火山現象への対応と整合した実効性の高い指針となる予定です。
荒木 そして、9月には今年も防災イベントが開催されますね。
古屋 そうですね!9月13日、土曜日、午前10時から甲府駅北口 よっちゃばれ広場と甲府市歴史公園で「やまなし防災減災フェス」を開催予定です。富士山噴火をテーマとした展示ブースの出展も計画しています。詳しくは「やまなし防災減災フェス」で検索してください。
荒木 9月13日「やまなし防災・減災フェス」ぜひお出かけください
荒木 この時間は、山梨県 防災局 火山防災対策室 古屋 海砂さんとお伝えしました。古屋さん、ありがとうございました。
古屋 ありがとうございました。



