2024年8月23日放送
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2024年8月23日放送

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富士山噴火時の徒歩避難

小松 8月26日は「火山防災の日」です。明治44年のこの日、浅間山で日本初の火山観測が始まりました。今年から、この日が活火山への対策についての関心と理解を深めるために火山防災の日として制定されました。ここ山梨県では富士山の噴火が心配されます。正しい対策をしっかり知っておきたいですね。

そこで、きょうは「富士山噴火時の徒歩避難」について山梨県 防災局 火山防災対策室 古屋 海砂(ふるや みさ)さんとお伝えします。古屋さん、よろしくお願いします。

 

古屋 よろしくお願いします。

 

小松 富士山は活火山と言われますが、現在どのような状態なんでしょうか?

 

古屋 はい、富士山が最後に噴火したのは、今から300年以上前、江戸時代の1707年です。しかし、富士山は直近5600年の間で約180回噴火したことがわかっています。これは平均すると30年に1回噴火していることになります。300年以上噴火していないことから、今後、いつ噴火してもおかしくない状況といえます。

 

小松 平均すると30年に一度…驚きました!富士山が噴火すると、どんなことが起こると考えられますか?

 

古屋 富士山が噴火すると「大きな噴石」、「溶岩流」、「降灰」など様々な噴火現象が発生する可能性があります。しかし、ハザードマップや避難計画を確認して、行政からの情報に注意して、適切に避難することで「命」と「暮らし」を守ることができます。

 

小松 命を守る上でまず大切なのがハザードマップ。ハザードマップについて改めて教えていただけますか?

 

古屋 富士山ハザードマップは、火山現象の影響が及ぶ可能性のある範囲を地図上に示したもので、避難計画を考える基礎となります。

富士山ハザードマップは、平成16 6月に策定されました。策定以降、新しい科学的知見が蓄積され、令和3 3 月に改定されました。

 

小松 3年前に改定されたということですが、どんなことが見直されたんでしょうか?

 

古屋 これまでの研究を踏まえて、想定火口範囲や溶岩流等の影響範囲が見直されました。富士吉田市の市街地付近に想定火口が設定されたことから、溶岩流が市街地に到達する予想時間が短くなりました。

 

改定後のハザードマップによると、溶岩流が3時間以内に到達する可能性のある範囲の対象人口が約116千人となり、旧マップから約10 万人も増加しています。これを受けて避難方法の抜本的な見直しを行い、「富士山火山避難基本計画」も改定されています。

 

小松 市街地付近も火口が想定されると心配になりますね。では、富士山噴火からの避難について教えてください。

 

古屋 はい。富士山噴火で起こる現象には、大きな噴石、火砕流、溶岩流、降灰など様々な現象がありますが、それぞれ到達する時間や命への危険性、被害が及ぶ範囲も異なります。

 

小松 現象によってどう異なるのでしょうか?

 

古屋 「大きな噴石」は噴火によって吹き飛ばされる2030㎝以上の岩石で、火口から2~4㎞程度飛散します。「火砕流」は、高温の火山灰や岩石や火山ガスが一体となって斜面を駆け下る現象で、時速は100㎞、温度は600℃を超えることもあります。「溶岩流」は、火口から噴出したマグマが地表を流れる現象で、市街地など傾斜が緩やかな場所では人が歩く速度より遅いことが多く、幅は数百m から1 ㎞程です。

 

このように噴火現象によって到達する時間や範囲が異なるので、自分が住んでいるエリアではどんな噴火現象が、どのくらいの時間で到達するのかを日頃から確認しておくことが大切です。

 

小松 どのように避難・移動をすればよいでしょうか?

 

古屋 大きな噴石や火砕流からの避難は噴火前に危険なエリアからの車両での立ち退き避難が必要になります。一方で溶岩流は市街地では人が歩く速度と同じかそれよりも遅くなる可能性があることから一般住民は噴火後に徒歩による避難を推奨しています。

 

小松 どうしても車で避難したい…と思ってしまいます。

 

古屋 そうですね。車両による避難は問題がいくつかあります。まずは、渋滞の問題です。溶岩流が3 時間以内に到達する可能性があるエリアの住民が、一斉に車で避難するというシミュレーションでは、交通渋滞によって避難先への到達まで最長で6時間以上かかることが想定され、溶岩流に車ごと飲み込まれてしまう事態が起きかねません。また、渋滞は緊急車両だけでなく、高齢者や体の不自由な方の避難の妨げにもなります。

 

小松 そのための徒歩避難ですね。

 

古屋 はい。溶岩流の場合は速度徒歩による避難でも十分間に合うと考えられることから、歩行に問題がない一般住民の方には徒歩避難をお願いします。

 

小松 どの程度の距離を避難すればよいでしょうか?

 

古屋 溶岩流は、限られた範囲に流れていくため、いきなり市街地全体を覆う可能性は低いので、必ずしも遠くに避難する必要はありません。まずは近場で安全を確保しましょう。

 

小松 避難はどんな方向にしたらよいでしょうか?

 

古屋 溶岩流からは流れる方向とは異なる方向に避難することが効果的です。また避難する場所ですが、溶岩流は低い地形に沿って流れていくため、河川などの低い地形ではなく、高台に避難してください。

 

小松 そのほか避難する際のポイントはありますか?

 

古屋 富士山に噴火の予兆があると発表された際、自宅以外の親類宅などで生活ができる方は、行政からの避難指示前であれば自家用車で早めに避難していただく、自主的な分散避難も呼び掛けています。

 

小松 噴火は予知ができるんでしょうか?

 

古屋 噴火の予知には限界があるのですが、火山活動が活発化したときには、気象庁から5段階に分かれる噴火警戒レベルというものが発表されます。噴火警戒レベルに応じて、避難が必要なエリアが決められていますので、市町村の防災マップ等で確認しておきましょう。また、噴火警報が出たからといって必ず噴火するわけではないこと、噴火警戒レベルは順番に出されるわけではないことに注意をしてください。

 

小松 いずれにしても日頃からの備えが大切になってきますね。

 

古屋 そうですね。地域で実施される避難訓練に積極的に参加して、富士山噴火に備えてください。食料や飲料水、常備薬を1週間程度備蓄するほか、火山灰に備えて、ヘルメットやゴーグル、マスクも用意しておくとよいでしょう。富士山の噴火について正しく理解し、過度に恐れることなく備えていただきたいと思います。

 

小松 はい、わかりました。

この時間は山梨県 防災局 火山防災対策室 古屋 海砂(ふるや みさ)さんとお伝えしました。ありがとうございました。

 

古屋 ありがとうございました。

次回は9月27日(金)17時15分放送

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