がんに負けない健康講座

第4回がん遺伝子パネル検査の実際

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「がん遺伝子パネル検査」は、国が指定した医療機関で受けられます。全国には、がんゲノム医療が受けられる医療機関が240カ所あり、具体的には「中核拠点病院」が12カ所、「拠点病院」が33カ所、「連携病院」が195カ所あります。山梨県内では、山梨県立中央病院と私たちの山梨大学医学部附属病院が連携病院として指定されています。
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2023年1月末現在、山梨大学医学部附属病院では151人がん遺伝子パネル検査を実施。私が専門とする大腸がんの患者さんが全体の30%ほどを占めていました。全国的にみても大腸がんの患者さんが最も多く検査を受けています。
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2019年の数字になりますが、種別のがん罹患者は大腸がんが最多で、加えて、がん遺伝子パネル検査が登場する前から、抗がん剤治療を選択する際には遺伝子異常の確認を必要としてきたことも要因の一つだと思います。
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これまでは、がんが再発して手術ができない場合は特定の遺伝子を検査し、初回治療として標準的な抗がん剤治療を行っていました。しかし、「がん遺伝子パネル検査」を実施することで、標準治療のほか、その遺伝子の変化に対応する薬剤があれば、次の治療からその治療薬を投与していくことになります。
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検査では、約27%は何かしらの「推奨治験」が見つかり、治験の登録に至った症例はおよそ8%でした。治験とは新しい薬について、国の承認を得るために行う臨床試験のことで、標準治療では打つ手がないとされてきた患者さんにとっては光明となります。
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一方で、特徴的な遺伝子の変化が見つかっても、その遺伝子変化に対応した薬剤が存在しない場合や開発途中で使えない場合もあります。日本では、欧米諸国と比べて治験の実施体制、特に医療環境や習慣の違いのため臨床試験が進みにくいことなどを指摘されています。まずは「がんゲノム医療」「がん遺伝子パネル検査」を医療関係者だけでなく国民の皆さまに広く知っていただくことが大切です。その上で、患者さんやご家族への経済的サポートなどを充実させることが必要だと思います。
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講師紹介

古屋 信二氏

山梨大学医学部消化器外科(第一外科)助教

古屋 信二(ふるや・しんじ)氏

山梨市出身。山梨医科大学卒。専門は下部消化管(大腸・肛門)外科。医学博士。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、消化器がん外科治療専門医、日本消化器病学会専門医、ロボット外科学会専門医、消化器内視鏡学会専門医。日本がん治療認定機構がん治療認定医。