2024年11月22日放送
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プレコン健診スタート
小松 山梨県では、希望する誰もが安心して妊娠・出産できるようプレコンセプションケア=妊娠前の健康管理の推進に取り組んでいます。今年度から、職域健診と地域の医療機関でプレコン健診が受診できる支援がスタートしました。きょうはプレコン健診について詳しくご紹介したいと思います。
山梨県 子育て政策局 子育て政策課 天野 杏さんとお伝えします。天野さん、よろしくお願いします。
天野 よろしくお願いします。
小松 プレコンセプションケア…まだ耳なじみのない方もいらっしゃると思います。プレコンセプションケアとはどんなものなんでしょうか?
天野 プレコンセプションケアを直訳すると「妊娠前管理」となりますが、成育基本法の基本方針では、「女性やカップルを対象として将来の妊娠のための健康管理を促す取組み」とされています。広い意味では、若いうちから、男女ともに将来の妊娠なども意識して、自分の心身の健康管理を行うことを指します。晩婚化に伴う高齢出産や不妊、少子化が進んでいることから近年注目されています。
小松 妊娠を見据えた健康づくりというわけですね。健康は基本…でも若いとなかなか自分の健康を意識しない方も多いでしょうからね。
天野 そうですね。日本では、産科医療の発展によって妊産婦死亡率や生後間もない赤ちゃんの死亡の割合は劇的に減少しています。しかし、女性が持つリスク因子が原因とされる赤ちゃんの先天異常や、低出生体重児の数、母親の妊娠合併症による生後間もない赤ちゃんの死亡の割合は減少していません。
小松 どんなことが原因になりますか?
天野 はい。リスク因子としては、痩せていることや肥満、喫煙、高齢などが考えられていて、これらに該当する女性が妊娠した場合、流産、早産、低出生体重児、先天異常の発生頻度は通常よりも高くなります。
小松 様々な影響があるんですね。
天野 そうですね。胎児の心臓は受精後22日で拍動を始め、神経管は受精後28日までに閉鎖します。閉鎖が不完全の場合、脳や脊髄に先天異常が起きるので、妊娠に気づいてからリスク因子のケアを始めるのでは遅くなってしまいます。
小松 将来の妊娠を見据えて、自身の健康を考えることが必要なんですね!
山梨県の妊娠を取り巻く現状はいかがでしょうか?
天野 令和4年度に県が実施した実態調査で、不妊治療における支援体制・相談体制についての課題が見えてきました。
様々な意見が寄せられたんですが、例えば、
「若いときに妊娠に関する正しい知識を知りたかったという不妊治療当事者からの意見」や「妊娠に関する正しい知識が浸透していないことが問題という医療関係者からの指摘」、また、「不妊治療と仕事の両立のために有給休暇をとりやすい雰囲気が必要」との回答が最も多かったことなどから、企業側の不妊治療に関する理解が重要ということがわかりました。
小松 妊娠は女性一人ではできないので、男性の理解も必要ですよね?
天野 プレコンセプションケアは、男性にも関心を持ってもらうことがとても重要です。男性も正しく理解することで、自身の健康だけではなく、職場や家庭で女性をサポートできるようになります。そのため、あらゆる年代の男性・女性に対して、教育・保健・医療・職域の各方面からプレコンセプションケアを実施することが必要とされます。
小松 そこで、山梨県では実際にどんな取り組みが行われているんでしょうか?
天野 プレコンセプションケアの推進は、昨年度から進めてきました。企業や大学と連携して、出張講座を開催し、今後、結婚や子どもを持つことを考える年代の方を中心に妊娠・出産に関する正しい知識を普及啓発しています。
そのほか、SNSを活用したオンライン相談窓口を開設しました。LINEなどを活用した思春期・妊娠・出産、不妊・不育・流産などに関する相談支援を実施しています。また、流産や死産を経験した女性に対する相談員向けの研修を行い、遺族をサポートする対応マニュアルを作成して県内市町村に配布しました。
小松 今年度はいかがでしょうか?
天野 セミナーとオンライン相談に加えて、プレコン健診支援を行い、本格的に実施しています。
今年8月に山梨県と包括連携協定を結んでいる住友生命と連携して「プレコン啓発セミナー」を開催しました。男性にも参加していただいて、不妊になりやすい生活習慣をクイズ形式で考えたり、キャリアアップとライフイベントの両立についても考えました。
さらに9月の「未来に繋がるプレコンセプションケア」をテーマにしたセミナーでは、医師による解説を交えながら、月経や不妊症、適切な栄養摂取、感染症について理解を深めていただきました。そして、きょうのテーマの「プレコン健診」をスタートさせました。
小松 詳しく教えてください!
天野 はい!「プレコン健診」は企業などの健康診断、もしくは提携クリニックにおいて、将来の妊娠に備えた現在の健康状態のチェックを行い、必要に応じて医師から助言が受けられます。自治体において、企業などの健康診断と地域の医療機関の両者で受診できるのは全国初の試みです。
小松 全国初!それはすごいですね!では、プレコン健診を受診するにはどうすればよいでしょうか?
天野 はい。山梨県のHPからプレコン検診の申し込みサイトにアクセスしていただきお申込みください。その後、オンラインで約10分のセミナー動画をご覧いただいてから、医療機関で受診していただきます。
小松 動画で事前に学習してから受診するんですね!
天野 そうですね。まだ妊娠を考えていない方、パートナーがいない方も健康な生活習慣を身につけて、思い描く未来を実現するきっかけになるという主旨を理解した上で、受診していただきたいためです。この動画は県ホームページにてどなたでもご覧いただけます。
小松 健診に自己負担はありますか?
天野 自己負担はありませんが、健診の結果によって治療が必要になった場合、窓口で費用が発生します。
小松 受診できる方の条件はありますか?
天野 山梨県に在住、もしくは在勤されていて、年齢は令和7年3月31日時点で18~39歳の女性になります。
小松 どんな健診が受けられるんでしょうか?
天野 リスク因子や不妊症につながる可能性があるかを判断する目安となるものを項目としています。甲状腺機能や感染症、卵巣の予備能などを調べることができます。健診場所により検査項目が異なりますので、詳細は、プレコン健診申し込みサイトをご確認ください。
小松 職域健診がプレコン健診の対象とならないまたは、今年の健康診断が終わってしまった~!という方もいらっしゃると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか?
天野 はい。企業などの健康診断が既に実施済みなど、職域健診で対応できない方、学生や専業主婦、個人事業主の方は、提携医療機関での受診が可能です。また、今年度の結果説明最終日は令和7年2月末を予定しているので、令和7年2月15日までにプレコン健診の受診をお願いします。
小松 是非、ご自身の身体について知っていただくためにもぜひ受診していただきたいですね。
きょうは、山梨県 子育て政策課 天野 杏さんとお伝えしました。ありがとうございました。
天野 ありがとうございました。