39歳以下のAYA世代を応援する健康講座

第1回妊孕性温存療法(3月2日放送)

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「妊孕性(にんようせい)」というのは、妊娠できる能力や可能性のことを指しています。「妊孕性温存療法」は、がんになってしまっても将来、妊娠できる可能性を残しておくための治療ということになります。
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今や世代を選ばなければ人が生きている限り、がんは2人に1人がかかる時代といわれています。こうした中、ゼロ歳から39歳までの小児およびAYA世代のがん患者さんは、日本全体のがん患者さんのおよそ4%を占めています。山梨県においては、100人ほどの小児AYA世代のがん患者さんがいます。

近年は、がんに関するさまざまな治療法が開発されていて、がんは治せる病気になっています。従って、がんを克服したサバイバー(経験者)の方も増えて、社会の中で活躍されています。AYA世代のがん患者さんも例外ではありません。がんの治療がひと段落ついたころに、「子どもが欲しい」と考えられる方もいると思います。その時に、がんの治療を行う前に妊孕性温存療法をしておけば、将来、妊娠できる可能性を残しておくことができます。
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がんに有効な治療の中には、抗がん剤や放射線治療など妊孕性に影響を及ぼすものがいくつもあります。場合によっては、そのまま精子や卵子がなくなってしまい、妊娠することがかなわなくなってしまうこともあります。そのため、がんの治療を行う前にこの妊孕性温存療法行うことがポイントです。
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女性の場合は、卵子を取り出しての「未受精卵子凍結」、配偶者などがいて精子と結合させた「胚(受精卵)凍結」、二つある卵巣のうち一つの卵巣を細かく刻んで凍結保存しておく「卵巣組織凍結」といった方法があります。一方、男性の場合は精子を凍結保存するという方法です。妊孕性温存療法は理論上では、ゼロ歳から実施することが可能です。
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費用は保険適用外で、全て自費になってしまいます。ただ、各都道府県で助成制度があります。山梨県に住所がある方であれば、「山梨県がん患者等妊孕性温存支援事業」という助成制度を利用することができます。
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山梨大学医学部附属病院は、こうした妊孕性温存療法にかかわる県内唯一の「医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)、および卵巣組織の凍結・保存に関する登録施設」となっています。また、「認定がん・生殖医療ナビゲーター」という相談に乗れる資格を持っている者もいますので、がん患者さんの治療後の人生を見据えたサポートが可能です。

詳細は、山梨大学医学部附属病院のホームページ内の「お知らせ」に掲載されている「腫瘍センターセミナー」から「がん・生殖医療」という動画をご覧いただくか、山梨大学医学部産婦人科のホームページにも治療手順などが掲載されておりますのでご確認ください。

もし、自分や身近な方が「がん」と診断されてしまったら、治療が始まる前に「妊孕性温存」について主治医と相談してみてください。治療が始まってから知った方も何かできることがあるかもしれませんので早めにご相談ください。妊孕性温存を希望される場合は、主治医を通して山梨大学医学部附属病院産婦人科の小川あてにお問い合わせをお願いいたします。
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講師紹介

小川達之氏

山梨大学医学部産婦人科助教

小川 達之(おがわ・たつゆき)氏

山梨大学医学部卒。医学博士。専門は生殖医療、産婦人科一般。日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会臨床遺伝専門医、日本がん・生殖医療学会認定ナビゲーター。神奈川県横浜市出身。