39歳以下のAYA世代を応援する健康講座

第2回乳がんと妊孕性温存療法(3月9日放送)

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女性に多い乳がんや子宮頸がんなど女性特有のがんは、ほかのがんと比べて、20代から30代のAYAと呼ばれる若い世代に圧倒的に多いのが実情です。特に30代は、この二つのがんがある分だけ、男性の約2倍がんになりやすいと言われています。ただ、どちらのがんも子宮がん検診や乳がん検診で見つけられます。早期発見と適切な治療によって長期の生存も可能ですので、まずは検診をしっかり受けることをお勧めします。
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今回のテーマとなる「乳がん」ですが、治療として手術はありますが、がん細胞の種類や広がりによって放射線治療やホルモン療法、化学療法といったいわゆる抗がん剤の治療を組み合わせて行うことが多くなります。
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抗がん剤治療はがん細胞にはとても有効です。が、妊娠に必要な卵子に悪影響をおよぼしてしまい、治療後には妊娠しづらくなってしまいます。一方、ホルモン療法は卵子に直接的には影響しませんが、治療期間が5~10年と非常に長期間になってしまうことから、治療が終わったときには高齢出産といわれる40代となってしまい妊娠しづらいといった特徴があります。

妊孕性温存療法はがんになってしまっても、将来、妊娠できる可能性を残しておくための治療になります。将来子どもがほしいとなった場合に備えて、がん治療を始める前に主治医の先生と妊孕性温存について相談することはとても大切なことだと思います。
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女性の場合は、「未受精卵子凍結」、配偶者などがいて精子と結合させた「胚(受精卵)凍結」、二つある卵巣のうち一つの卵巣を細かく刻んで凍結保存しておく「卵巣組織凍結」といった方法があります。一方、男性の場合は精子を凍結保存するという方法です。妊孕性温存療法は理論上では、ゼロ歳から実施することが可能です。
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費用は保険適用外で、全て自費になってしまいます。ただ、各都道府県で助成制度があります。山梨県に住所がある方であれば、「山梨県がん患者等妊孕性温存支援事業」という助成金の制度を利用することができます。
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山梨大学医学部附属病院は、こうした妊孕性温存療法にかかわる県内唯一の「医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)、および卵巣組織の凍結・保存に関する登録施設」となっています。また、「認定がん・生殖医療ナビゲーター」という相談に乗れる資格を持っている者もいますので、がん患者さんの治療後の人生を見据えたサポートが可能です。また、乳がんには遺伝性のがんもあり、こうしたがんを心配される方も増えています。臨床遺伝専門医もおり、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」について相談することも可能です。

詳細は、山梨大学医学部附属病院のホームページ内の「お知らせ」に掲載されている「腫瘍センターセミナー」から「がん・生殖医療」という動画をご覧いただくか、山梨大学医学部産婦人科のホームページにも治療手順などが掲載されておりますのでご確認ください。

もし、ご自身や身近な方が「がん」と診断されてしまったら、治療が始まる前に「妊孕性温存」について主治医と相談してみてください。治療が始まってから知った方も何かできることがあるかもしれませんので早めにご相談ください。妊孕性温存を希望される場合は、主治医を通して山梨大学医学部附属病院産婦人科の小川あてにお問い合わせをお願いいたします。
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講師紹介

小川達之氏

山梨大学医学部産婦人科助教

小川 達之(おがわ・たつゆき)氏

山梨大学医学部卒。医学博士。専門は生殖医療、産婦人科一般。日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会臨床遺伝専門医、日本がん・生殖医療学会認定ナビゲーター。神奈川県横浜市出身。