女性のための健康セミナー

第2回婦人科がんについて② ~卵巣がん~(1月17日放送)

卵巣がんには20~30種類ぐらいあり、10代が罹患する種類もありますが、約8割は「上皮性卵巣がん」で、子宮体がん同様50~60代が罹患のピークになっています。
卵巣はおなかの中に完全に入り込んでいるため子宮や大腸などのようにがん検診ができず、加えて初期の段階は無症状のため発見が遅れ、3期や4期といったかなり進行した状態で来院される方が多いのが特徴になります。残念ながら亡くなる方が多いのも事実で、がん情報センターによると年間約13000人が罹患して約4700人が亡くなっているというデータもあります。
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卵巣がんの患者さんは増えているように感じます。理由の一つとして子宮内膜症があります。今や女性の3人に1人は子宮内膜症を持っているのでは、と言われています。子宮内膜症は、もともと生理の時に流れるはずの子宮の内膜が骨盤内に広がってしまう病気です。内膜が卵巣の中に広がることで卵巣腫瘍をつくり、炎症を起こすことで生理痛の原因にもなります。卵巣内でも生理と同じように出血が繰り返されることで細胞にストレスを与え、やがてがん化を引き起こすと言われています。ただ、子宮内膜症由来の卵巣嚢腫を持っている方は定期的な通院で早期にがんを発見することが可能なので、きちんと受診することが大切です。
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卵巣は本来、親指ぐらいの大きさですが、直径30㌢の方や、13㌔にもなって歩くのがつらくなって来院されたケースも。おなかだけが膨れるなど体で何か心配だと思うことがあれば婦人科でも、人間ドックでもいいので健康診断を受けることをお勧めします。

治療法は早期なら手術がメインになりますが、卵巣がんは早期でも再発しやすいので、プラス抗がん剤治療というのが今のメインになっています。
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最近はさまざまな研究が進んでいます。山梨県立中央病院には「遺伝子解析センター」(2013年開設)があり、私も研究に携わっています。卵巣がんには遺伝子が変異した「BCRA遺伝子」が原因となるケースがあり、山梨県の頻度を調査した結果、予後不良で見つかる方の約2割はこの遺伝的な要素を持っていることが分かり(世界初の)情報を発信したこともありました。
この遺伝子には有効な治療薬(PARP阻害剤)があったのですが当時、日本では未承認。こうした中、14年に私が担当する患者さんがこの遺伝子を持っていることが分かり、病院と相談し、厚生労働省の承認も得た上で個人輸入し使用。患者さんは末期で脳転移もあったことから余命3カ月から半年でしたが、約5年存命されました。この治療薬は今では日本でも承認されて多くの方を救っています。最近ではあきらめていた娘さんの結婚式に出られたと喜んでくださった患者さんもいました。

予後不良と言われた卵巣がんも全進行期で生存率は改善されてきています。山梨県にいても最先端の治療が受けられ、一人でも多くの方に長生きしてほしいというのが私の願いです。そのためにこれからも研究を怠らず、医術を磨き、これからもスタッフともども患者さんに向き合っていきます。

※グラフなどは山梨県立中央病院婦人科部長坂本育子医師提供
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sakamoto03

\この方に教えていだだきました!/

坂本 育子

地方独立行政法人山梨県立病院機構 山梨県立中央病院婦人科部長
ゲノム検査科部長