女性のための健康セミナー

第4回山梨で最高の医療を ~予後を救うロボット支援下手術~(1月31日放送)

従来の腹腔鏡手術をさらに進化させ、患者さんの負担(侵襲)が少なくなるように開発されたのが「ロボット支援下手術(別名:ダ・ヴィンチ手術)」です。手術はロボットではなく、あくまでドクターが行います。
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 腹腔鏡手術はおなかの下腹部などに約1㌢くらいの小さな切開創(穴)を3カ所あけ、そこから鉗子という長い菜箸のようなものを入れて、ドクターがその鉗子を実際に動かしながら臓器の摘出や縫合をします。
 
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 一方、ロボット支援下手術はへそのやや上辺りに同様の切開創(穴)を3カ所あけ、そこからロボットの細い腕(アーム)を入れ、ドクターは少し離れた場所にある操縦席のようなコックピットでおなかの中の画像を見ながらアームを操作して手術します。腹腔鏡との大きな違いはアームの先が小さな手首のようになっていて自在に動かせることです。おなかの中は3Dカメラ(内視鏡)で立体的に見えるので、まるでおなかの中に入って手を動かしているような感覚で手術ができます。
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※上の画像をクリックすると、ロボット支援下手術の様子を動画でご覧いただくことができます。
※実際の手術の映像となります。気分が悪くなる可能性がある方はお気をつけください。
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 山梨県立中央病院婦人科では2014年から腹腔鏡下手術を、16年からロボット支援下手術を導入。子宮体がんにおけるロボット支援下手術件数は全国2位(19年)の実績を持ち、前回、お話しした骨盤臓器脱も20年にロボット手術が保険収載(治療効果が認められた)となり、当院でも積極的に導入しています。

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 腹腔鏡手術とロボット手術は、切開創の位置は違いますが、穴の大きさに大差はなく、退院も術後2、3日と短く、早期の社会復帰が望めます。

 では、ロボット手術のメリットは何か。各科のドクターや患者さんへのアンケートから見えてきたのは、腹腔鏡手術よりロボット手術の方がわずかながらも出血量が少ないことと、手術後の傷の痛みが少ないことが挙げられました。QOL(生活の質)を考える上でも痛みが少ないのは大きな意味を持ちます。
 
 ロボット手術は繊細で緻密な動きができることから、骨盤の深いところの手術では一層の本領を発揮。直腸がんや前立腺がんも腹腔鏡下では出血しやすいものの、ロボット手術では出血量が少ないといわれています。
婦人科では、子宮体がんのほか、良性の子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症もロボット手術が保険適用されていますが、骨盤内の臓器の中でも大きな子宮を出血させずに取り出せるというのは患者さんの体への負担を考えると大きなメリットとなります。
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 ロボット手術は誰でも行えるわけではありません。私は、日本ロボット外科学会が定める国内A級ライセンスを持っていますが、執刀するにはライセンスが必要となります。支えてくれるスタッフを含めたチーム医療とも言え、多くの患者さんを救うためにも後進の育成は重要と考えています。(私は)同学会のプロクター(手術指導医)の資格も持っていて、院内や県内はもちろん、要請があれば県外にも出掛けていき指導に当たっています。
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4週にわたって婦人科の疾患について説明させてもらいました。私が常に考えているのは、「(患者さんが)山梨にいても最先端の医療が受けられる環境を整えたい」ということです。特にがんの患者さんたちが1日でも長く、1日でも幸せでいられるようにこれからも研鑽していきたいと思っています。婦人科の疾患はこのほかにもありますし、悩みを抱えている女性もいらっしゃると思います。ささいなことでも不安や気になることがあったらいつでも受診してください。

※グラフなどは山梨県立中央病院婦人科部長坂本育子医師提供
 
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sakamoto03

\この方に教えていだだきました!/

坂本 育子

地方独立行政法人山梨県立病院機構 山梨県立中央病院婦人科部長
ゲノム検査科部長