女性のための健康セミナー

第3回骨盤臓器脱とは(1月24日放送)

 骨盤の底にある筋肉(骨盤底筋)が緩むことで、膀胱(ぼうこう)や子宮、直腸などが膣から落ちてくるという女性特有の病気です。
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子宮脱、膀胱脱・膀胱瘤(りゅう)、直腸脱など臓器別に呼び名はありますが、総称が「骨盤臓器脱」になります。
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 一般的に出産の回数が多い方や、(おしりを下につけない)しゃがんだ姿勢を長くとることが多い方、少々太っている方はおなかの内圧(腹圧)が上がり、臓器が膣から出てきやすくなります。年齢を重ねるごとに筋力が衰えてくることもあり、中高年層に多いのは事実です。出産経験が多い50歳以上の方の約半分は多かれ少なかれ骨盤臓器脱があるといわれています。
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 患者さんの訴えで一番多いのは「何かが膣の間に挟まっている感じがする」といった違和感です。「最近、おしっこの回数が増えて尿が漏れる」といったおしっこ関係のトラブルを訴える方もいます。女性はもともと尿道が短いことから病気がなくてもおしっこ回りのトラブルは年齢とともに増えてきます。ただ、それが骨盤臓器脱によるものだとしたら治せるかもしれません。
「膣に何かが挟まった感じがする」という場合は婦人科を、おしっこ回りなら泌尿器科ですが、泌尿器科の先生から婦人科に紹介されることもあるので、婦人科か泌尿器科のどちらかを受診してください。
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 治療は、基本的には「ペッサリー」という輪っかを膣の中に入れて臓器を押し上げる保存的な方法があります。入院の必要はありませんが、ペッサリーを交換・消毒等が必要なため約3カ月から半年に1度は外来へ通っていただかないとなりません。

 選択肢の一つに手術もあります。臓器によって多少違いはありますが、現在の主流は腹腔鏡やロボット支援術です。メッシュという人工物でおなかの中から子宮の一部と、膀胱などを引き上げて元の位置に戻します。山梨県立中央病院ではロボット支援術をメインにしています。おなかの3カ所に約1㌢の穴をあけるだけの手術のため、おなかを切る開腹よりも傷が小さい分、痛みや出血が少なく手術後、2、3日で退院できます。
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  予防としては「骨盤底筋体操」という骨盤を閉める体操があります。骨盤が開いて、緩んでいる出産直後から行ってほしいです。鍛えた箇所が腹筋のように目に見えるわけではありませんが、立っている時に肛門を閉める動作をするのも有効です。また、長時間しゃがむことや、加齢とともに女性は便秘になりやすく、いきむことが増えますが、これらも注意しましょう。

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 臓器が体外に出てくることが死に直結するわけではありませんが、QOL(生活の質)には大きく影響します。ご年配の方たちは周りにも気を使って産婦人科に行くのをためらわれる方もいます。しかし、治療で改善できるだけに、何かトラブルがあれば気兼ねなく受診することをお勧めします。

※グラフなどは山梨県立中央病院婦人科部長坂本育子医師提供
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sakamoto03

\この方に教えていだだきました!/

坂本 育子

地方独立行政法人山梨県立病院機構 山梨県立中央病院婦人科部長
ゲノム検査科部長