女性のための健康セミナー

第1回女性ホルモンと手指の疾患(2月7日放送)

 手外科は、肘から指先までのケガや病気を治療する専門の集団です。整形外科医や形成外科医の中でも、手を得意とする手外科専門医は山梨県内に7人います。

 ペットボトルを持つ、キャップを外す、字を書く、家の鍵を開けるなど、「つまむ」「握る」「つかむ」にしても手にはさまざまな動作があります。つまみ動作ができる動物はオラウータンなどの一部のサルや人間だけです。かなり多彩な運動ができる分、筋肉や神経は非常に複雑な構造でできています。
矢印
 手の感覚神経は唇と同じくらい神経密度が高いといわれています。指先の神経や血管の太さは細いところで0.5ミリ、太いところでも約1ミリです。大学病院や国立病院に勤めていた時は、事故で指が切断された患者さんの患部を顕微鏡で見ながら髪の毛より細い糸でつなぐ(縫合する)こともしました。
手はかなり複雑な構造のため、高い専門性を必要とする治療が多いことからも「手の外科」が誕生し、厚生労働省の専門医制度誕生とともに「手外科」と呼ばれるようになりました。
手外科では、骨折や腱損傷、じん帯損傷などのケガのほか、腱鞘炎や神経が圧迫を受けることで指先などにしびれやまひなどを感じる絞扼性(こうやくせい)神経障害、変形性関節症、先天異常などの病気を診療します。
矢印
 今回のテーマ、女性ならではの手の疾患には「女性ホルモン(エストロゲン)」が大きく影響しています。50歳前後の閉経期を挟み、エストロゲンが減少することから体調に変化が表れます。これが更年期障害です。のぼせやほてり、ホットフラッシュ、頭痛、めまい、不眠、不安感、全身疲労感などの症状が有名ですが、腰痛や手指のしびれ、知覚過敏、関節痛もその一つになることがあります。更年期障害に伴う手指関節の痛みや腫れ、変形は45歳ぐらいから見られてくるという報告もあります。
矢印
一般の整形外科(診療所)を訪れる患者さんの男女比は半々ですが、当クリニックは女性が約6割。
矢印
年齢層も45~59歳が突出して増えています。それだけ更年期に手の症状が表れやすいことがうかがえます。
矢印
矢印
 エストロゲンは関節や腱鞘とも密接に関係していて、骨と骨の間にある軟骨を安定化させるための関節の袋(関節包)や、骨と筋肉をつないでいる腱を包む腱鞘というじん帯性の硬い膜を保護してくれています。エストロゲンの急激な低下で関節包や腱鞘に炎症が起こり、痛みなどのさまざまな症状が起こるのです。
矢印
 「リウマチかな?」と思う人もいますが、こうした自己免疫性疾患は診察や血液検査などで診断されます。さまざまな検査をしても答えが出ない場合はエストロゲンが影響している可能性が高いことが考えられます。専門の女性外来や産婦人科医に相談することで改善された患者さんがいるほか、女性ホルモンの代わりになるようなサプリメントを2、3カ月飲んで改善されたという方もいます。一人で悩まずに、病気かどうかを確認する意味でも、まずは受診することをお勧めします。

※グラフなどは医療法人楓林会 さとう整形外科院長佐藤信隆医師提供
矢印