女性のための健康セミナー

第1回月経に伴う不調 ~PMSと月経困難症について~(3月7日放送)

女性特有の月経(生理)にまつわる悩みは、女性だけでなく男性にも知っていただきたいと思っています。
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「PMS」はPremenstrual Syndromeの略で、排卵を過ぎて生理に至るまでに起こる体と心が不調に陥る「月経前症候群」のことを言います。イライラや落ち込み、気分の変調、集中力が低下してしまうなどの精神症状や、おなかの張りや腹痛、腰痛、乳房の痛み、ニキビ、むくみ、めまいなど体に出る症状もさまざまあります。生理の10~3日前ぐらいから症状が現れ始め、生理が始まるとよくなるのが特徴です。
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原因は女性ホルモンの増減による内的因子のほか、日常生活の負担や性格・経験・周囲からの理解度によっても影響が出ます。女性の社会的自立やライフサイクルの変化もあってPMSの患者さんは以前と比べ増えており、今や現代病ともいえます。目に見えて分かるようなものではないので、自分自身で「つらい」と感じたら婦人科を受診してください。

症状がある時期は無理をしないでゆっくり過ごしましょう。一番大切なのは生活習慣や食生活を見直すセルフケアです。規則正しい生活や適度な運動、禁煙、バランスの良い食事に気を付けるだけでも症状が軽減しますし、治療で薬を使うことになった際も治療効果がアップします。
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薬物療法では、低用量ピルによるホルモン療法や漢方薬、症状が強い場合は抗うつ薬を使うことがあります。年齢や症状に合わせて、患者さんと相談しながら治療法を決めています。また、PMS用のサプリメントも推奨されています。副作用などで薬が使えない場合はサプリメントを紹介しています。
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女性の60~80%は生理の時に下腹部痛や腰痛、頭痛、乳房痛、吐き気などを自覚していて、全く症状がない方が珍しいといえます。症状が強く出て、日常生活に支障をきたしてしまうような状態を「月経困難症」といいます。月経困難症には大きく分けて二つあり、明らかな病気がないような「機能性月経困難症」と、婦人科の病変がある「器質性月経困難症」です。
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機能性月経困難症は、思春期から20代前半の若い女性に多く、診察上はっきりとした婦人科の病変がないことが特徴です。成長段階の思春期は子宮の出口が狭いということも原因の一つと考えられ、子宮が成熟すると症状が軽くなる傾向があります。おなかの痛みは1~2日ほどで消えることが多いです。

器質性月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が伴うものになります。30歳以上の女性に多く見られ、痛みのほかにも月経量が増えることが特徴で、生理が始まってからもおなかの鈍い痛みが続くことがあります。
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治療法は、まず超音波検査や内診の所見で機能性か器質性かを診断します。機能性の場合は鎮痛剤や子宮の収縮を抑える薬が有効です。痛み止めだけで効果が乏しい場合は、漢方薬やホルモン療法を行います。
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器質性の場合は鎮痛剤などの対処療法のほかにも、症状や基礎疾患に合わせてホルモン療法や手術が必要となります。ホルモン療法には低用量ピルのほか、黄体ホルモン製剤などの飲み薬や、子宮内黄体ホルモン放出システムという器具を使うもの、偽閉経療法などがあります。年齢や問診情報、診察所見から適切な治療法を、患者さんと相談しながら決定していきます。

PMSや月経困難症は治療によって症状を改善できることが多く、早期の診断や治療が大切です。我慢をして、学校にも仕事にも行けずに家で寝込んでしまうと生活の質(QOL)も落ちてしまいます。お薬で楽になることも多いです。辛い症状に悩まれている方はぜひ一度婦人科の受診を検討してみてください。
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