オムニバス的な。

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ちょっと前に見た景色を一つ、二つ。

 

近所のラーメン屋さんにて。

ある昼、その店の「もやしそば」が食べたくなって、ふらっと立ち寄った時のこと。

カウンターでひとり食べていると、後からお店に来た初老の夫婦が僕と並びの席に座りまして。僕、奥さん、旦那さんという並び。確か、旦那さんがワンタンメンで、奥さんがチャーハン。僕も横目に、「今度それにしてみよう」なんて思っているときに旦那さんが「母さん、ティッシュ」と。そりゃ熱いラーメンすすっていれば、鼻水も出る。ちょうど僕の目の高さにある、店主が厨房からラーメンを出してくれるところに備え付けの箱ティッシュ。僕が箸をおいてその箱を手渡そうとした、ものの5秒。奥さんがそれより速く、すかさずバッグから「はい」とポケットティッシュ。旦那さんを知り尽くしているからこそできる、奥さんの気遣い。特に言葉数が多いご夫婦ではなかったけれど、これもコミュニケーション。それこそ長年連れ添った夫婦の「阿吽」の呼吸で、ここに僕のような外部の人間が入る余地はなく。二人の時間を大切にしているであろう夫婦の姿が印象的な、ラーメン屋さんにて。

 

ところ変わって、車の運転中。

僕の前の車、の前に男性ライダー。多分中型くらいの。

左にゆるくカーブする道の、信号のないところでバイクが停止。対向車線の車に右手を大きく振っていまして。知り合いを見つけたにしてはかなりオーバーリアクションだし、後ろの車を止めてまでするなら生き別れの兄弟くらいでないと、なんて考えていると。

そのバイクと止まった対向車の間を、手押し車のおばあちゃん。

よく見ると、信号のない横断歩道。ライダーは死角になって見えにくかった対向車に、そのおばあちゃんの存在を伝えていたのでした。

 

自分の乏しい想像力を恨むと同時に、今僕たちが求められているのは「これだ」と。

名前も知らない他人に、思いやり。人によっては神対応というのかもしれないが、そのライダーの頭上に輪っかは見えなかったので誰にでもできるはずで。

 

身近な手が届く範囲の人にも、それ以外の人にも、の、優しさ。

こんな時だからこそ、と人並みに。

2020年5月28日 17:22

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