2023年5月26日放送
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2023年5月26日放送

こちらで放送内容を聴くことができます

 

 

 

 

富士山の噴火対策について

 

小松 山梨県防災局 防災危機管理課 火山防災対策室・技師 古屋海砂(ふるや みさ)さんにお越しいただきました。古屋さん、よろしくお願いします。

 

古屋 よろしくお願いします

 

小松 古屋さんは、火山防災職として、4月に県庁へ入庁されたということで、具体的にどのような業務をされているんですか。

 

古屋 火山は他の災害と違って多様な現象が発生するため、噴火の状況によって必要となる対応が変わってきます。しかし、火山災害自体の発生頻度が低く、正しい知識を身につける機会が少なくなってしまいます。このため、火山を学んだ立場で各種計画の策定など、火山の特性に応じた避難体制づくりを進めています。

 

小松 より専門性が生かされた業務ということですね。過去の火山災害、例えば雲仙普賢岳や御嶽山では多くの犠牲者が生じてしまいました。富士山が噴火すると、あのように北麓地域でも多くの方が被災してしまうのでしょうか。

 

古屋 報道で目にする機会が多い火山災害としては、雲仙普賢岳の『火砕流』や御嶽山の『噴石』による被害が挙げられると思います。ただし、これらの噴火現象は、火口の近くにしか到達しないため、まずは、行政の情報に基づき、一定程度、山から離れることが大切です。

 

小松 北麓地域の全てが被災するのではなく、まずは山から離れることが大事ということですね。富士山の近くで暮らしていながら、火山災害のことをよく理解している人は少ないないかもしれません。だからこそ、古屋さんのような火山防災職の方が必要ですね。

 

古屋 まずは、皆さんに富士山のことを正しく知っていただき、正しく備えることが大切だと考えています。噴火を止めることはできませんが、正しく備えることで被害を最小限にとどめることができると考えています。

 

小松 火山災害について正しく知るという点では、3月末に公表された『富士山火山避難基本計画』についても気になるんですけれどもこの計画の中で、皆さんに知ってほしいところはどんなことでしょうか。

 

古屋 この計画は、富士山の火山防災の共通ルールとして策定したもので今後、この計画を基に県や市町村が必要な計画を作成します。新たな対策として定めたもののうち、特に皆さんに知っていただきたいことが3つあります。1つは「徒歩による避難の重要性」です。

 

小松 詳しく教えてください。

 

古屋 すべての住民の安全を確保し、逃げ遅れゼロとするため、一般の住民の方は原則徒歩での避難をお願いしています。多くの方が車で一斉に避難を開始すると渋滞が発生し、車よりも徒歩で移動した方が、短時間で避難が完了すると考えられます。高齢者や足の不自由な方の避難、緊急車両など防災対策上、不可欠な車両の妨げにならないよう、歩行に問題ない方は、徒歩での避難をお願いします。

 

小松 また噴火と聞くと、火山灰の被害が思い浮かびます。たくさんの降灰が発生したらどうすればいいでしょうか?

 

古屋 皆さんに知っていただきたいことの2つ目は、「降灰時の屋内避難」についてです。降灰については、江戸時代の宝永噴火でも、大量の火山灰が東京方面までの広い範囲に降り積もりました。しかし、次の富士山噴火の際、大量の降灰が発生するかどうかは、噴火するまでわかりません。降灰そのものは、直ちに命の危険につながるものではありません。むやみに移動すると危険ですので、まずは、自宅などの屋内に留まり安全を確保しましょう。

 

小松 灰が降っているときは、車での移動も避けた方がいいようですね。

 

古屋 はい。車での移動は視界も悪く、立ち往生や事故が多発しますので、非常に危険と考えられます。また、降灰の影響により物流が停滞する可能性があるため、食料品や飲み水、常備薬など1週間分を目安に備蓄するのがおすすめです。

 

小松 そのほか、避難のポイントはありますか?

 

古屋 3つ目として「自主的な分散避難」という避難方法を知っておいていただきたいです。

 

小松 自主的な分散避難とは具体的にはどういうことですか?

 

古屋 「富士山が噴火するかも!?」とニュースなどで流れると、不安を感じる方や徒歩ではなく自家用車で避難したいという方には、「自主的な分散避難」をおすすめします。これは、避難指示とは別に、親類や知人の家、宿泊施設など、自分で決めた場所に早い段階で避難する方法です。この自主的な分散避難は、居住地を離れても生計を維持できる方や、早めの避難を希望する人は検討してほしい方法です。悩んでいる間に自家用車での移動が制約される場合もありますので、自主的な分散避難を行うか事前に決めておくことが大切です。

 

小松 事前の避難であれば、車での移動も可能な場合がありますから、各家庭でいざというときの避難場所を決めておくのも大切かもしれません。こうしてお話を伺っていますと、逃げ遅れなく避難するには、一人ひとりの知識ですとか家族での共通認識が重要になりますね。

 

古屋 そうですね。私たち一人ひとりが日頃から噴火時に備え、準備できることがあります。例えば、家族や職場で富士山噴火時の対応について話し合っておくことです。緊急時に近くで身を守れる場所はどこか、家族との連絡の取り方はどうしたらいいか、など話し合っておきましょう。

また、職場やお住まいの地域で実施する避難訓練に積極的に参加することも大切です。訓練をしてみると気づかなかった問題や課題が明らかになることもあります。

 

小松 訓練で初めて導線が確認できたり、必要なものが見えてきたりしますよね。

 

古屋 そうですね。普段から準備しておかないと、いざという時に対応ができません。訓練に参加し、噴火時の避難方法、いつ、どうやって、どこに向かえばいいのか、を皆さんに知っていただきたいです。しっかり備え、本番では慌てず落ち着いて行動できるようにしておくことが重要です。

 

小松 いざという時の行動は日頃からの備えが大切なんだということがよく分かりました。

ところで、噴火関連の情報というのは、私たちのもとへどうやって届くのですか?

 

古屋 富士山で異常が観測されたり噴火が発生した場合には、気象庁、県、市町村から様々な情報が発信されますので、行政機関のホームページや防災行政無線の情報に注意してください。災害時には、色々な情報が数多く流れるかもしれませんが、発信元を良く確認して正確な情報を得るようにしてください。

 

小松 まずは噴火災害がどのようなものか、富士山に近い私たちは知っておく必要がありますね。

また古屋さんのような、火山防災職の皆さんの活動にも注目していきましょう。

 

今日は、山梨県防災局 防災危機管理課 火山防災対策室 技師の古屋海砂さんにお話を伺いました。

古屋さん、ありがとうございました。

 

古屋 ありがとうございました。

 

 

次回は6月23日(金)17時15分放送

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